令和8年度障害福祉サービス報酬改定を見据える

経営者が今から整えるべき「5つの視点」
障害福祉サービスを取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。
令和6年度の障害福祉サービス等の総費用は約4.18兆円となり、前年から12.1%増と、政府予算の伸び率を大きく上回りました。利用者数の増加に加え、一人当たりの月額費用も20.1万円から21.3万円へと上昇しています。
これは、福祉サービスの必要性が高まっている一方で、制度の持続可能性が国レベルで強く意識され始めていることを意味します。
こうした流れの先に控えているのが、令和8年度(2026年度)の報酬改定です。
まだ具体的な改定内容は公表されていませんが、資料やこれまでの改定傾向を見ると、経営者が備えるべき方向性はかなり明確になってきています。
本記事では、令和8年度改定を見据えて、障害福祉事業の経営者が今から意識しておきたいポイントを整理します。
1.「量の拡大」から「質の評価」へ
これまでの障害福祉は、
・事業所数
・利用者数
・提供量
といった“量”の拡大が中心でした。
しかし近年は、
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自己評価の実施と公表
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地域連携推進会議の開催
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支援内容の見える化
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ガイドラインに基づく運営
など、支援の中身そのものを評価する方向へと舵が切られています。
特に共同生活援助(グループホーム)では、ガイドラインに基づいた自己評価の作成や公表、地域との連携が明確に求められるようになっています。
今後の改定では、
「提供しているか」よりも、
「どんな支援を、どのように、どんな成果につなげているか」
が問われる可能性が高くなります。
つまり、現場で良い支援をしているだけではなく、説明できる仕組みを持っているかが経営力になります。
2.人材確保から「人材定着・育成」へ
資料の中でも、人材確保は喫緊の課題として示されています。
しかし今後は単なる採用ではなく、
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職員配置の妥当性
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研修体制
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キャリアパス
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定着率
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チーム運営
といった点が、より重視されていくと考えられます。
福祉経営において人件費は最大コストであり、同時に最大の価値でもあります。
令和8年度改定に向けては、
「人を集める経営」から
「人が育ち、辞めにくい仕組みを作る経営」
への転換が必要です。
人材が安定しなければ、どれだけ制度が良くても事業は続きません。
人材戦略は、現場任せではなく経営課題そのものです。
3.「見える経営」が評価される時代へ
今後の報酬体系では、
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支援プログラム
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個別支援計画
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モニタリング
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記録
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公表
といった部分が、より厳密に見られるようになります。
特に児童系サービスでは、
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健康・生活
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運動・感覚
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認知・行動
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言語・コミュニケーション
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人間関係・社会性
という「5領域」を意識した支援設計が求められています。
重要なのは、
「やっている」こと
ではなく、
「説明できる形で整理されている」こと。
支援内容、連携状況、成果の整理は、将来の改定でそのまま評価項目に転びやすい領域です。
経営者には、現場任せにせず、支援の設計図を持つ視点が求められます。
4.就労系は「実態評価」へ進む
就労継続支援B型では、平均工賃月額の算定方式が変更され、これまで実態より低く見えていた部分が是正されました。
これは国が、
「表面的な数字ではなく、実際の運営実態を見たい」
という姿勢を示したものとも言えます。
令和8年度改定では、
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稼働率
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利用実績
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支援成果
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生産活動の中身
など、より中身重視の評価へ進む可能性があります。
形式だけ整えても評価されず、
運営の実態が問われる時代になってきています。
5.収益構造とコスト管理の再設計
総費用が急拡大している以上、国は必ずどこかで調整を行います。
その際に起きやすいのが、
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基本報酬の再配分
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加算要件の厳格化
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評価項目の再設計
です。
つまり、
「今の報酬体系で回っているから安心」
ではなく、
「評価基準が変わった時に耐えられるか」
という視点が必要になります。
経営者には、
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稼働率
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人件費率
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加算依存度
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利益構造
を把握し、数字で語れる経営をしていくことが重要です。
令和8年度改定に向けて今できること
① 支援内容の言語化
支援を5領域・成果・連携の視点で整理する。
② 人材戦略の見直し
採用より「定着・育成」を優先する。
③ 経営データの可視化
稼働率、人件費率、加算構成を把握する。
④ 地域連携の設計
会議・情報共有・発信体制を整える。
⑤ 改定リスクの想定
報酬が変わった場合のシミュレーションを行う。
おわりに
令和8年度の報酬改定は、単なる点数の変更ではなく、
「どんな事業所が残るのか」を国が選別していく改定
になる可能性があります。
制度は変わります。
しかし、準備している事業所は、変化をリスクではなくチャンスに変えられます。
福祉経営は、日々の運営ではなく、未来の設計です。
今こそ、令和8年度を見据えた経営の土台づくりを始めていきましょう。

